注意:第百二十八訓ネタで、パー土、基い銀土です。
本誌ご覧になっていない方で、notネタバレ!って方はご遠慮願います。
まぁ正直どの辺が本誌?って感じですけど……(焦)
「……嘘だろ?」
階段の上には幕府のお偉いさんと真選組。
その中には勿論アイツもいて……
何でお前がこんなところに?!
俺、こんな格好なのに気まずいじゃねーか……!!!
階下で見上げる俺は、お前の目にどう映るだろうか。
『バスタオルは貴方に』
沖田がドS心を全開にしている階段上。
その横で松平ってオッサンとゴリラが話してて、
更にその隣で、1人悠々と煙草をふかすアイツがいた。
いや、いない筈がない。
だって………なァ。
「……あ」
その時、見上げる俺と、煙草をくわえる奴との目が合ってしまった。
その顔にはどっかで見た顔だ、と書かれている。
じろじろと刺さるその視線から逃げるように、思わず俺は宙に視線を泳がした。
……やべー。
アイツ、俺の事超見つめちゃってるよ……
顔の右半分に視線を感じながら、俺は色々と考えを巡らせた。
バレたらバレたで、アイツはうるせーだろーしなァ。
さァて、どーしたもんかね……
視線を奴の方へ戻したその時、奴の瞳孔がますます開かれた。
煙草が口元から外れる。
いっけね……!!
「おま……うぉっ?!」
奴が口を開き、ポトッと煙草が音を立てて落ちた時、
俺は奴の目の前に立ち尽くしていた。
自分の掌で、奴の口を覆って。
「ゆっくりしてって下さいよぉお客さぁん」
裏声を使いながら、にっこりと微笑みかける。
営業スマイルってやつか。
「今日はたっぷりサービスしますんでぇ〜」
口を塞がれた奴は、思いっきり不審そうに眉を寄せている。
もがもがと何かを言おうとしてる奴の耳元で、俺はそっと囁いた。
「うっせぇ、ちょっと黙ってろ」
そうして続けた。
「この後た―――っぷりサービスしてやっから」
フゥッと耳に息を吹きかけた後で、にっこりと微笑んでやると、
奴は少しだけ頬を赤らめた。
あーぁ、可愛い奴だぜ、全く。
「で?」
店の裏口。
ライターがカチッと音を立て、少しだけ周りを明るく照らす。
戸口にもたれかかった土方が、煙を吐き出した。
「どーしてお前がそんな格好してんだ」
「べっつに〜」
「理由もなくソープ嬢の格好すんのかテメーは」
奴の反対の壁にもたれる様にしてしゃがみ込む。
パー子のヅラを取りながら、上から降ってくる声に俺は小さく笑った。
見上げる奴は、どうやらかなりイラついてる模様。
ま、そらそうだろーなァ。
折角の非番だったっつーのに、デートドタキャンされて。
尚且つそのドタキャンされた相手にスナックで出くわすんだもんなァ。
更にこんな格好してりゃ、な。
「だーかーら、コレは一応仕事なんだって」
ちょっと本気で拗ねてるっぽい奴を下から覗き込む。
「そんな怒んなって」
「……怒ってねェ」
「怒ってるじゃん」
「怒ってねェ」
そう言いつつ、顔はそっぽ向いたままじゃねーか。
「銀さんは万事屋さんなんですけどォ」
「万事屋はソープ嬢もやるのかってんだコノヤロー」
「仕事は金回りで選ぶんですー。それとも何だ」
あ?と不機嫌そうに応える奴に、
俺はちょっと口を尖らせて上目遣いで奴を見上げてみた。
「銀さんのこの格好……、イヤ?」
「そーじゃなくて、じゃねェ、だからってそれァ……」
奴はうっと少し困った顔をした後で、
照れ隠しなのかくしゃっと自分の髪をかき上げた。
どうやらこの格好はイヤじゃなく、寧ろ嬉しいのかもしれんなァ。
そう判断した俺は、ニヤリとしながら尋ねてみた。
「……なァなァ、何でさっきからそんな拗ねてんの?」
「拗ねてもねェし、怒ってもねェ」
「あ、そぉ」
俺は小さく息をついた。
嘘付け。
どーせ折角久々の非番&デートだったのに、
ドタキャンされるし結局現場に駆り出されるしで不機嫌なんだろ?
ったく。ガキかお前は。
ま、そんな意地っ張りなトコも可愛いんだけどな。
「全くお前は素直じゃねェな〜」
よっこらしょと立ち上がり、
悔しそうに煙を吐くその口から、そっと煙草を引き抜いてやる。
トン、と壁に左手を着き、右手に煙草を持ち、そしてそっと奴の首筋に顔を埋める。
「……もし上様が」
しばらくの沈黙の後。
奴が呟く様にして吐いた言葉に、俺は何だよと小さく応えた。
「……お前の事、気に入ったらどーすんだよ」
「……あん?」
思わず顔を上げる。
でも奴の顔は相変わらずそっぽを向いたままだった。
……それが不機嫌な理由か、オイ。
俺が将軍に気に入られる?そんな心配してたんか、コイツ……
小さく笑いながら、俺はそっと呟いた。
「バーカ」
お前、本当バカだ。
俺が気に入られる訳がねーだろ。
ニヤニヤしながらそう尋ねると、
わかんねーだろ、と奴は食い下がった。
やっぱりバカだな、コイツは。
てっきり俺ァドタキャンに怒ってると思ったのに……
そんなアホな心配してくれちゃってまぁ。
「ホンット可愛いーな、お前」
首筋から唇を離し、それを、少し耳を赤らめる奴の唇へと向かわせた。
安心しろ。
例え将軍様に気に入られても、一生遊んで暮らせる程に金回りが良くても。
……俺はついてなんかいかねーから。
可愛い可愛いお前を、俺が手放すとでも思ったか?
全く、ジョーダンじゃねェ。
バスタオルを外すのは、たった一人の為だけで充分。
な、そーだろ?