ゆらゆら、ゆらゆら。

静かに降り積もる冬の華。

世界が一色に染まっていく。









「銀世界の恋人」



















「うわー!」



私は思わず走り出した。



「すごいね、銀ちゃん!いつもとなんか違うねっ」



あたり一面が同じ色になっているのに感動して、

「あー寒い」と後ろの方で呟く彼に声を掛けた。



「そりゃお前、雪が降ったんだから当然だろ」



さくさくと音を立てながら歩き出す彼には、

感動の色がちっとも見られない。

私はふくれながら、置いていかれないように彼の後ろを追いかけた。



「ちぇ、なんか感動薄くない?」

「あーすごいすごい」

「……もういーよ」



そう呟いてフン、とふくれると、「ガキかお前は」と彼は笑った。



―――ちぇ、ガキ扱いしないでよね。



そんな事を思いながらさっくさっくと足跡をつけて歩いていく。

いつもとは違う足の感触を楽しみながらゆっくりと、彼の足跡を辿った。



















昨日の夜中、どうやらかぶき町にも雪が降ったらしく、

今朝起きたらあたり一面が白で覆われていた。



積もった雪を見たのは何年ぶりだろうか。

この景色をとても嬉しく思った私は、散歩をしようと言って、

こたつに引きこもりたがる彼を外へと引っ張って来たのだ。





歩きながら、くるりと改めて辺りを見回してみる。

いつも見慣れている屋根も、垣根も、全てが雪を纏っていた。



それらは、白というよりは白銀。

日差しが反射して、積もった雪がキラキラと輝いていた。





……綺麗だな。

そう思った瞬間、ぞっとする程の不安が私の中を駆け巡った。





「おっ?!」





駆け巡ったと同時に、私の右手は彼の服の裾を引っ張っていた。

それに驚いた彼が私を振り返る。





「危ねーなァ!なーにすんだよ。急にひっぱんなって、転ぶでしょーが」

「あ…、ごめん」





そう小さく呟いて私は俯いた。

さっきの、無駄に元気な私とは明らかに違う今の態度を不思議に思ったのか、

彼は立ち止まって、そっと私の手を握った。





「なに、お前。なんかあったの?」





心配してくれている彼をそっと見上げる。

―――こんなに近くにいるのに……





私が思わず彼の服を引っ張ったのは、

日差しが反射して、前を歩く彼の姿が見えなくなったからだった。

―――同じ銀色の世界に溶けてしまったのかと思ったんだ。

そんな事、あるわけないのにね。





私は、小さく首を横に振った。





「ううん、……ちょっとびっくりしただけだよ」





ゴメンね、驚かせて。

そう言ってニコッと微笑む。





「行こっ銀ちゃん!」

「さっきからなんなのお前……変なヤツ」

「えへー」





眉を寄せる彼の手をぎゅっと握り返す。

大丈夫、彼はちゃんと隣にいる。



その証拠に、私の掌は彼のぬくもりに包まれている。

2人分の足跡が並んでいる。



大丈夫、彼はちゃんと傍に―――



















白銀の世界。

冬の華も並ぶ2つの足跡も、まもなく溶けてなくなるけれど。

繋いだ掌が温かいうちは、何があっても溶けないよね?

信じているよ―――銀世界の恋人。



















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銀さん夢。……ゆ、夢?
いや、あの、銀さんがいなくなってしまいそうな不安に襲われるヒロインの話です。
……ゆ、夢?(2回言った)
う〜む、夢がどんなもんかわからなくなってきてるなコレ。
よし、また一人ドリー夢観光ツアーを実施しよう。
てな訳で、貴女様のサイトにも参上するかもしれない!ずェ!