友達以上、恋人未満。

その関係から抜け出したものの、あまり変化はしていません。

いつになったら私たち、恋人らしくなるのかしら!









「ムテキなオンナのコ」2nd 〜花より団子〜









「くぉら―――!!!」

「へ?」





4限目終了のチャイムが鳴り響いて数分。

いざお弁当!とゆう時に、

廊下から物凄い足音と雄叫びが聞こえてきた。





なんだろう、この雄叫びには以前にも聞き覚えがあるような…

あれ…デジャヴ?





首をかしげていると、スパーンと勢いよくドアが開いた。

それと同時にズンズンとこっちに向かってくる姿。





「あれ、やっぱり弦ちゃんだ」





私は不思議に思いながら「なぁに?」と尋ねた。





「何かあったの〜?」

「お前!また俺の弁当を何処かへやったな!」

「へ?知らないけど…」

「とぼけるんじゃない!」





うがぁとやっぱり前のように怒鳴る彼。

全くお前はいつもいつも!とブツブツ言う。

いや、まぁ確かに前科はありますけど…





「知らないよ、今回は私じゃないって!」

「じゃあ他に誰がいると言うのだ!」

「え〜…赤也とかぁ、仁王とか?」

「アイツらにはとっくに聞いたわ。そして違った」

「……で、私が怪しいと?」

「そうゆうことだ」





さぁ、早く返せ!

そうズズイと顔を寄せてくる彼。

んもう、だぁかぁらぁ……!





「えいっ」





私は彼の鼻をプスッと押してやった。

うっと少しだけひるむ彼。





「な、何をする!」

「本当に私じゃないんだってば!何で信じてくんないのよぉ!」





そう私が言うのと同じくらいに、

教室の外で弦一郎、と呼ぶ声が聞こえた。

二人揃って廊下を見やる。





「お取り込み中のところ悪いんだが」

「蓮二」

「あ、柳!」





柳を見つけた瞬間、私はガタリと席を立ち上がった。

助けて!弦ちゃんが苛めるよ〜!

右手にフォーク、左手に弁当を持ったまま柳の後ろに隠れる。





「コラ、待たんか!」

「べーっだ」





フン、と柳の後ろで舌を出す。

信じてくれない弦ちゃんなんて知らない!





「おや、随分と険悪のようだな」

「……気にするな。で、何だ?」





少しだけ不機嫌そうな弦一郎(元々不機嫌そうだけど)が近付いてきたので、

私は適度に距離を保ちつつ、柳の後ろで本日のメイン・からあげをひとつ頬張った。

あぁそうだと、柳が右手に持っていたものを弦一郎に差し出す。





「ん?コレは…」

「お前の弁当だ」

「「?!」」





丁寧に包まれた四角い箱が、柳から弦一郎の手に納まる。

ど、どうしてこれをお前が…!

動揺する弦一郎に、柳は淡々と説明した。





「あぁ、さっきわざわざ届けに来てくれたぞ」

「誰が」

「お前の母親が」

「!」





途端、決まりの悪そうな顔を浮かべる弦一郎。

それを見て、フ、と柳が軽く微笑んだ。





「じゃあ、俺はコレで」

「あ、あぁ…すまんな、蓮……っむ?!」





その時、弦一郎の顔が一瞬引きつった。

それもその筈。

柳の後ろには、じとーっとした目で彼を睨む私がいたのだから。





「げーんーちゃん」





右手のフォークをぎゅ、と力強く握り締める。

弦一郎の顔は未だに引きつったままだ。





「キミ、さっき、なんつったっけ?」

「ぬ…」

「弁当返せ、って言わなかった?」

「い、いや、すまん……」





もごもごと、この男にしては珍しく押し黙る。

私は、無言でフォークを顔の横に並べてニコッと微笑んだ。

それに釣られたのか、弦一郎も心なしか引きつり笑顔を浮かべて見せた。

一瞬だけ二人の間に嫌な空気が漂う。





「弦ちゃん」

「な、なんだ?」





すぅっと大きく息を吸って、私は力の限り叫んだ。





「弦ちゃんなんかだいっきらい!!!」

「なっ!」

「だいっきらいだバカー!」





うわぁああん!!

弦ちゃんなんかハゲちゃえ―――!!!





そうして私は、捨て台詞を吐きながら猛ダッシュでその場から離れた。

なんだなんだ?とざわつく廊下に、弦一郎と柳を残して。











「ほう、アレはなかなか見事なダッシュ力だ。なぁ弦一郎?」

「……」

「弦一郎?」





ひょい、と覗き込むと、

そこには相当のダメージを受けて真っ白になっている弦一郎がいた。





「……ふむ、いいデータがとれたよ」





流石の弦一郎も、

好きな女に大嫌いなどと言われたらこんな風になるのだな。





「早く追いかけたらどうだ?」

「ぬ、ぬ?!」





あまりの衝撃の為に意識を飛ばしていた弦一郎。

俺が傍にいた事も忘れていたらしい。

意識が戻り、俺の姿に気付くと、





「すまん、蓮二!」





と、すぐさま彼女の姿が消えていった方向へと走って行った。





「全く…面白いやつらだ」





弦一郎の背中を見ながら、俺は小さく息をついた。



















「うっうっうっ……」





生暖かい風が微妙に吹き抜けて、前髪を揺らした。

……私は屋上にいた。

あれから色んなところを走り回って、最終的にここへと辿り着いたのだ。

いつの間にかメインのからあげがなくなったお弁当を傍に置いて、

私はうーん、と大きく伸びをした。





「ふん、だ!弦ちゃんのばぁか!」





ずっと鼻をすすりながらブツブツと呟く。





「自分弁当忘れてんじゃん!だから私違うって言ったのに!」





確かにいつもイタズラばっかしてるから、

疑われてもしょうがないんだけど…でも。





「もーちょっと信じてくれてもいいじゃん……」





やっぱりちょっと哀しかったよ、弦ちゃん。

確かに私、やる事がいちいちガキっぽいからさ。

信じれないかもしれないけどさ。





「……信じて欲しかったなぁ」





ぽつんと一人、体操座りで身を丸めた。

丁度その時、後ろでバァンッと大きな音がした。





!」

「ぅハイッ!」





ビクッとして振り返ると、

扉にはゼハーゼハーと荒い呼吸をして立ち尽くす彼の姿があった。





「げ、弦ちゃん?!」





呼吸を整えながら近付いてくる彼に、私はフイッと顔を背けた。

あぁ、意地っ張りな私…!





「言っとくけど、私まだ怒ってんだからねっ!」

「お、お前…るな…!」





軽く咳き込みながらの言葉は聞き取り辛い。

私は思わず振り返って聞き返した。





「え?何だって?」

「フラフラするな!探し回っただろうが!」

「…へ」





眉間にしわを寄せながら、ゲホゲホとむせ返る彼を見上げる。





そいえば弦ちゃん、すごい汗だな。

呼吸も荒いし……もしかして。





私が口を開きかけたその時、

彼が「あぁ、やってしまった!」と声を上げた。

またもやビビる私。





「えっな、なに?!」

「弁当が…!」

「…弁当?」





彼の右手に握られていたのは、さっき柳が届けてくれたお弁当。

その包んでいる布に、かすかにシミが広がっていた。

どうやら勢いよく走ったせいで、中身が大惨事になっているらしい。





「…はぁ、しまった」





そう言って彼が大きくため息をつくのと、

私が吹き出すのとはほとんど同時だった。





「ぷっ」

「!わ、笑うなたわけ!」

「ぷぷ、だって〜」

「誰のせいだと思っとるんだ…!」





うん、私の為に走ってくれたんだよね。

…わかってるよ。





全く!とブツブツ言いながら、隣に腰を下ろす彼。

眉間にしわを寄せてるけど、多分これは照れ隠し。





……あ〜あ。

こんな弦ちゃん見てたら、

何だか怒っていた事がどうでもよくなってきたや。





「弦ちゃん」

「なんだ」





ぶっきらぼうに答える声に、私はにこっと小さく微笑んだ。





「ありがと」





私を探し回ってくれて。

そうやって言うと、彼は少し照れたように目線を外して、フンと鼻を鳴らした。

それから少しの間をおいて「すまなかったな」と呟いた。





「疑って悪かった」

「いいよ、もう気にしてない」





すこしだけ困ったように目を伏せる彼に、

私はすすす、とすぐ傍にまで近付いて、コツンと肩に頭を寄せてみた。

彼は何も言わなかったけど、きっと相当恥ずかしかったに違いない。

だって、寄せた肩の体温がとっても温かかったから。





と、そこで丁度タイミングよく、

同時に二人のお腹の虫が屋上に鳴り響いた。

……思わず呟く。





「……色気もムードもないねぇ、私らって」

「……そうだな」





もしかしなくても、花より団子な私たち。

なんだかすごくおかしくなって、二人で顔を見合わせて笑った。





「お昼、食べよっか」

「あぁ」





そうして久々に二人で食べたお弁当は、

片方はぐっちゃぐちゃだし、片方はメインのおかずがなかったりしたけど、

それでもとてもおいしかった。



















日々進歩してないようで、だけど確実に私たちは進歩している。



時には喧嘩したり、すれ違ったり、嫌になる時もあるけれど。

でもその分、仲良くなれるし、もっともっと好きになる。





きっとこれは、友達のままじゃ味わえないよね。

友達以上の関係である証。





恋人らしくなくていいか。

だってそれが私たち。

二人楽しければ、それでいいよね?





これからもたくさん喧嘩して、

その度に私が走り回るかもしれないけど…

その時はどうぞよろしくね、げーんちゃん!



















**お・ま・け**



でもそうは言ってもたまぁにね…





「あ、弦ちゃん」

「む?」

「髪に糸くずついてら〜」

「どこだ?」





ケタケタと笑う私に、髪を気にする彼。





「とってあげるね」

「む、すまな……」





そうして私は糸を取るフリをして、唇をそっと重ねた。

目を開けると、そこには呆然とした彼の顔。





「へへ、お弁当の味」





私は、にっとイタズラ笑いをしてみせた。

状況を理解したのか、途端に赤くなる彼。





「お、お前ってヤツは…!!」

「ねぇねぇ、弦ちゃん」

「な、なんだ!」





また照れ隠しでぶっきらぼうに答える彼に、私はにっこり笑った。





「だーいすき!」





やっぱりさ、恋人らしいことにも憧れるわけですよ。

あまり無理強いはしないけど、でももしもそんな時が来たら。

その時は欲望に身を任させてね?なーんて、ネ!

















――――――――――
はい、そんな訳で……
真田弦一郎、またしてもお弁当ネタかよってね。
ネタがないんだよ!ちきしょう!
内容の割に超時間かかったし…orz
ごめんさい、ずっと「早く書け!書け!」と待っていてくれたSよ…
今回は弦ちゃんがちっとも壊れてくれなかったよ…
しかも無駄に長くなったし…
σ(´・ω・`;)
…うん、まぁ、これで許して!ねっ!ニコッ!
それではっ!(逃)