世界はくるくる廻る。
それと同じで私のもくるくると。
地球の中心は何だろうね。
私の中心は、貴方だけれど。
さて、貴方の中心は?
「友情と愛情の間」〜私の世界〜
貴方の大きな背中をじっと見つめる。
かなり長い事そうしていたのだろう、彼が眉を寄せて振り返った。
「……」
「ハイ」
「視線が痛いからヤメロ」
「ヤ、です」
縁側の貴方の頬が少し上がって、そして煙を風にたなびかせながら言った。
「変な女」
「その言葉、男に変えてそっくりそのままお返しします」
「そら、どーも」
再び貴方の背中が視界に広がる。
それを見て、私は思わず手を伸ばしそうになった。
“ねぇ土方さん”
行き場のない手を引っ込めた後、私はそっと心の中で問いかけた。
どうして貴方は全てをその背に背負い込むの?と―――
我武者羅に駆け抜けて、止まって、再び歩き出したその背中。
そこに全部、全部、こぼさないよう抱えている貴方の背中。
何を背負っているの?
プライド?武士道?自分の魂?
―――過去の自分?
この際何だっていい。
ねぇ、私は隣にいるんだよ。
―――ううん、私だけじゃない。
貴方には“仲間”がいるでしょう?
一人で抱えないでよ。
話してよ。
もっと頼って欲しいよ。
いくら貴方が強くても、背中から零れるものもあるでしょう。
無理して背負う必要はないよ。
貴方の後ろにも、前にも横にも、仲間がいるんだから。
貴方が取りこぼしたものも、仲間が拾ってくれるよ。
でも……
そういくら私が隣で言い聞かせたとしても、貴方は飄々と笑うでしょう。
「一人で背負えるさ」と、煙草をふかしながら笑うでしょう。
そうしてきっと貴方は一人で歩いていくの。
歩くたびに増えていく、背中の重みに耐えながら。
ねぇ、人に頼る事が下手な貴方。
……これだけは聞いていて欲しい。
今人に頼る事が出来なくてもいいよ。
だけど、もしもいつか、私でない誰かを愛するならば。
―――貴方のその荷を預けられる人と幸せになって。
口が悪くて、伝えなくちゃならないのに言葉が全然足りなくて、
不器用で、それでもとても人情が厚い頑固な貴方。
―――そんな貴方を愛してくれる人と、必ず。
それはきっと私じゃない。
そんな事は気付いてる。知っている。
だけどそれでも貴方が大切だから。
全ては貴方次第だよ。
心を開くか、閉ざすかなんて。
ねぇ、貴方は何を背負っているの?
プライド?武士道?自分の魂?
―――過去の自分?
その問いに答えられる人が出来るまで、私がずっと近くにいよう。
私だけじゃない、貴方の仲間と共にずっと。
「土方さん」
無造作にはねる髪の毛が風に揺れて、それと一緒に煙も揺らいだ。
振り返らずに貴方は言う。
「今度は何だ?」
「後悔してももう遅いですからね」
「……はぁ?」
怪訝そうな声で振り向いた貴方に、
私は愛として、仲間としての笑みを捧げた。
世界はくるくる廻る。
それと同じで私のもくるくると。
地球の中心は何だろうね。
私の中心は、貴方だけれど。
貴方の中心は私じゃない。
いつかの誰かの為に空いたその場所に、
望みは無いと知りながらも、それでも期待を寄せてしまう。
そんな―――仲間思いで、貴方思いな、私の世界。
――――――――――
うっうぅ……土ミツ見てから、どうしてもこのテーマで書きたかったの!
「何故一人で背負い込むのか」って。
きっと土方さんは頼れない子に育っちゃったんだろうね……。
単行本派の方ごめんなさい。ネタバレっぽくてごめんなさい。
一応そうでもないようにしたつもりですが……。
取り敢えず空知先生に言いたい。あの話は反則だと。
失恋しました。ブロークンハーツです、えぇ。